2015年12月28日

渋谷区立松濤美術館「古代エジプト美術の世界展」

〈2015年歴史展感想5展目〉
古代エジプト美術の世界展.JPG

古代エジプト美術の世界展
会場:渋谷区立松濤美術館
会期:2015.10.06-11.23
観覧料:¥500
図録:未購入

 渋谷区立松濤美術館で開催の「古代エジプト美術の世界展」を鑑賞しました。松濤美術館を訪れるのは今回が初めて。道としては割合に分かり易かったのですけれども,渋谷駅からはちょっと遠かったように感じます。Bunkamuraザ・ミュージアムと方向が同じというのは利用し易く感じます。今後も行く機会は増えそうな美術館であります。

 今回の展示はガンドゥール美術財団の収蔵による約150点。その全てが日本初公開というのが嬉しい。小さなアミュレットから大きな像まで様々な角度から古代エジプトを眺めることが出来るのが嬉しい。特にエジプト神話の神像が多かったのは非常に好みでありました。イシス女神やホルス神,或いはセト神の像も楽しいのですが,やはりバステト女神像が猫好きとしては一番嬉しい。また,≪アミュレットのネックレス≫の美しさも大変素敵でありました。今回の展示の特徴は古代エジプト人の精神世界に触れたものが多かったということ。前述のエジプト神話の神像だけでなく,信仰の対象であったスカラベや或いはミイラ,死者の書,スフィンクスの展示も興味深いです。中には≪呪いの人形≫というものもありましたけれども。展示数も結構多くて見応えは十分。丹念に見ていると時間が幾らあっても足りません。それくらいに楽しい美術展でありました。鑑賞に割く時間があまりなかったのが悔やまれます。

 過度な期待をしていたわけではないのですが,想像以上に楽しい展示でありました。美術好きとしても歴史好きとしても満足の行く展示だったと思います。何度見ても古代エジプトを扱った美術展は魅力的。いつかはエジプトに足を運びたいものであります。その為にも世界が平和でなくてはなりません。美術や歴史を愛する者として,この世界が平穏であることを祈るばかりであります。それはまた古代エジプト人たちも同じ思いを持って,このような精神文化を残したのであろうと思います。
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2015年12月27日

国立西洋美術館「黄金伝説」

〈2015年歴史展感想4展目〉
黄金伝説.JPG

黄金伝説 古代地中海世界の秘宝
会場:国立西洋美術館
会期:2015.10.16-2016.01.11
観覧料:¥1,600
図録:未購入

 国利西洋美術館で開催の「黄金伝説」を鑑賞してきました。国立西洋美術館の展示は相変わらず好み。三連休中だったにも関わらず,それ程人出が多くなかったのも嬉しいです。同じく上野公園内の国立博物館や東京都美術館で長蛇の列が出来る人気の美術展があったことで相対的に少なくなったのもかもしれません。いずれにせよ,自分にとっては幸運でありました。愛知県にも巡回するので優先度が決して高いわけではなかったのですけれど,早めに鑑賞出来るに越したことはないですからね。

 今回の展示はひとつの文明ではなく,ブルガリアのヴァルナで発掘された世界最古の金製品から古代ギリシア,トラキア,エトルリア,そして古代ローマに至る約4000年に及ぶ黄金に纏わる地中海世界の文物が一堂に会するのが特徴的。ギリシア神話に名高い黄金の羊毛を求めるアルゴ探索隊の冒険から始まる黄金の物語が楽しいです。特にヴァルチトラン遺宝やパナギュリシュテ遺宝は圧巻でありました。黄金の輝きも然ることながら,精緻な彫金の技術が素晴らしい。この彫金技術ということに関してはエトルリアの≪腕輪≫の見事さに思わずため息をついてしまいます。斯様に優れた,比類なき技術を持った民が謎とされているというのが面白い。グリフォンやスフィンクスなど伝説上の怪物が螺旋上に列をなす≪螺旋状のディアデマ≫も大変美しかった。日本初公開の世界の至宝を間近で鑑賞出来たことを感謝します。ギリシア神話好きとしてはアテネのアクロポリスから出土した≪「テセウスの指輪」として知られる印章指輪≫も楽しかった。神話に登場する英雄の実在性を感じます。ニケやアフロディテら女神を象った作品も興味深い。また,ギュスターヴ・モローの≪イアソン≫やルノワールの≪パリスの審判≫,マルカントニオ・バッセティの≪ダナエ≫など様々な形で“黄金”が関わる絵画が展示されていたのも素敵でありました。ペルセウスの母であるダナエに降りかかったゼウスの黄金の雨はやや付会な気もするけれども。勿論,ミダス王に纏わる展示があったのも楽しいです。

 あまりにも黄金尽くしの展示故,感覚がすっかり麻痺してしまいます。しかしながら,人類史において,尤も人類を魅了する金属である黄金の魅力が存分に堪能出来る展示でありました。今回は地中海世界に限定されていますが,南米の黄金文明などに触れて欲しかったなあと思います。或いは“黄金の国ジパング”もこの種の展示には欠かせないでしょう。とは言え,存分に楽しめた展示でありました。今回,展示されている金の総量と総額がちょっと気になってしまいます。本当にどれくらいだったのでしょうか。
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2015年11月10日

名古屋市博物館「魔女の秘密展」

〈2015年歴史展感想3展目〉
魔女の秘密展.JPG

魔女の秘密展
会場:名古屋市博物館
会期:2015.07.18-09.27
観覧料:¥1,300
図録:購入

 名古屋市博物館で開催の「魔女の秘密展」を鑑賞しました。魔女という存在に焦点を当てた博物展というのは珍しい。というか,多分国内での開催は初めてなのではないかなあ。如何なる方向性での展示か,期待と不安が入り混じりましたが,蓋を開けてみれば,存外に魔女について真摯に考察を行う展示が殆どで大変楽しいものがありました。尤も,その歴史背景を鑑みると目を背けたくなるような人類の罪も直面しないといけないわけですけれども。それを踏まえても意義深い歴史系の博物展だったように思います。

 展示は全部で4章の構成。「信じる」「妄信する」「裁く」「想う」と魔女に対する態度の変化を歴史的時系列順にした展示は面白かったです。≪モグラの前脚のお守り≫や各種の≪護符≫を観ているだけでも楽しい。初期の魔女が伝統の担い手であったことを実感します。≪魔女のナイフ≫あたりの格好良さも素晴らしい。また,特に魔女との関連性は薄いのですが,中世欧州の武器が幾つか展示されているのも楽しかった。ハルバードなどの長柄の武器はやはり魅力的であります。そして,今回の展示で一番期待していた≪魔女に与える鉄槌≫が鑑賞出来たのは収穫でした。これはハインリヒ・クラーマーによる魔女の犯罪を体系的に記したもの。異端審問の際に使われたのですが,これが普及するに至ったのがグーテンベルクの活版印刷が契機というのがやり切れません。文明の進歩が却って悲劇を拡大させる見本というべきでありましょう。アルブレヒト・デューラーの版画≪空を飛ぶ魔女≫はこの時代の魔女の定義を全て備えたもの。即ち,この作品に描かれている魔女が中世欧州の魔女の姿ということになります。「裁く」はその名の通りの魔女裁判を題材とした章。拷問に使われた器具などの展示が中心となりますが,≪棘のある椅子≫や≪フランケンタールの斬首用剣≫などには息を呑んでしまいます。魔女裁判で処刑された女性が遺した手紙の朗読などはやり過ぎ感さえ覚える程でありました。「想う」は近代以降の魔女の印象の変化が興味深い。最後は現代日本の漫画家による魔女を描いた作品があったのも楽しかったです。

 魔女という存在の歴史的推移を俯瞰出来る興味深い博物展でありました。特に信仰としての魔女や魔女狩り・魔女裁判に纏わる展示が充実していたのが印象的です。惜しむらくはドイツとオーストリアの展示内容が偏っていたということくらいかなあ。特にアメリカでのセーラムの魔女裁判はかなり興味のある事象だけに扱って欲しかったところではあります。しかしながら,魔女という題材を過不足なく扱うという非常に新規性のある博物展であったのも事実。このような博物展がもっと増えて欲しいものであります。図録の充実ぶりも大変素敵でありまして,思わず久しぶりに購入してしまいました。
posted by 森山樹 at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史展感想

2015年10月18日

東京国立博物館「クレオパトラとエジプトの王妃展」

〈2015年歴史展感想2展目〉
クレオパトラとエジプトの王妃展

クレオパトラとエジプトの王妃展
会場:東京国立博物館
会期:2015.07.11-09.23
観覧料:¥1,600
図録:未購入

 東京国立博物館で開催された「クレオパトラと古代エジプトの王妃展」に行ってきました。大英博物館やルーヴル美術館など世界各地の美術館から古代エジプトに関する展示が集められるという規模の大きさが魅力的。また,古代エジプトの中でも特にクレオパトラを始めとする女性に焦点を当てるという題材が楽しいです。クレオパトラ以外ではネフェルティティ,ハトシェプスト,ティイらは特別扱いされていました。大きな展示物があったので見応えがあります。

 展示物は全部で約180点。大きく分けて5つの視点から展示がされています。勿論,エジプト神話の女神たちの像が展示されているのも嬉しい。イシスやセクメト,ハトホルといった女神たちの姿は思わず魅入ってしまいます。バステト女神に関する展示がなかったように思えたのはちょっと残念かな。とは言え,今回の展示の中心はやはり古代エジプトの女性ということになります。女性を彩る腕輪や首飾りなどの展示は目を楽しませてくれます。≪ウジャト眼の指輪≫の魔的な雰囲気がたまりません。また,≪アメン神妻のスフィンクス≫の獰猛なまでの格好良さは印象的。スフィンクスは或る種の美の顕現に思えます。クレオパトラ関係ではどの展示もその美を強調しているのが心に残ります。やはり古来から現代に至るまで歴史上で最高の美女のひとりとして扱われているというのは伊達ではありません。勿論,その悲劇的な末路がその美しさに付加要素を与えているのも事実ではありましょう。しかし,例えばヴァチカン美術館が収蔵するプトレマイオス朝期の≪クレオパトラ≫の美しさはやはり格別なものがあります。イタリアの画家アッキーレ・グリセンティによる≪クレオパトラの死≫も大変素敵でありました。他にもネフェルティティの≪王妃の頭部≫の完璧な美や男装の女王ハトシェプストの≪壺を捧げるハトシェプスト女王≫なども印象的。≪壺を捧げるハトシェプスト女王≫にはきちんと伝承通りに付け髭があるのが面白いです。≪ラメセス2世の王妃イシスネフェルト≫の額を飾るウラエウスも大変素敵でありました。

 古代エジプト好きとしては存分に楽しめる歴史展でありました。その一方でエジプト史に関する造詣の浅さを痛感したのもまた事実。改めてエジプト史をきちんと勉強したくなりました。その意味では良い契機となる歴史展だったように思います。そして,いつかはエジプト本国へと行きたいもの。恐らくスフィンクスやピラミッドを実際に見た時には心底感慨深いものがあるのでありましょう。その日の為にもきちんと古代エジプトを始めとする地中海史を再確認したいと思います。
posted by 森山樹 at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史展感想

2015年08月30日

東京都美術館「大英博物館展」

〈2015年歴史展感想1展目〉
大英博物館展.JPG

100のモノが語る世界の歴史 大英博物館展

会場:東京都美術館
会期:2015.04.18-06.28
観覧料:¥1,600
図録:未購入

 東京都美術館で開催された「大英博物館展」に行ってきました。英国はロンドンにある大英博物館は人類の知の叡智の殿堂とでもいうべき素晴らしい博物館。いつかは行ってみたい,というよりも,行かねばならない博物館のひとつであります。これまでにも何度か開催された大英博物館展には行ったことがあるのですが,その都度その想いを新たにします。実際に行ったら帰ってこられなくなりそうではありますけれども。

 今回の展示は100の展示を通して,200万年に及ぶ人類の文化史を辿ろうというもの。タンザニアで発掘された200万年前の≪オルドヴァイ渓谷の礫石器≫や≪オルドヴァイ渓谷の握り斧≫から現代の文化を代表する≪クレジットカード≫や≪ソーラーランプと充電器≫に至るまでの様々な文物が展示されています。自分が生きるこの時代も未来から見れば過去になるという視点は忘れがちになりますが,それは至極当然のことなのですよね。その観点から言えば,確かに≪クレジットカード≫も経済史・貨幣史における劇的な文化遺産ということでありましょう。100の展示はいずれも興味深いものばかり。一番の目玉はやはり≪ルイス島のチェス駒≫ということになるのでしょうか。いつかは観たいと思っていたものなので感慨深いものがありました。セイウチの牙やクジラの歯を素材とした精巧な彫刻が大変美しい。思わず,複製品を買いそうになってしまいました。また,ナイジェリア・イフェの≪イフェの頭像≫の驚異的な写実性も素晴らしかった。その用途が謎に包まれた≪ウルのスタンダード≫も想像力を掻き立てます。ローマの≪ミトラス神像≫の神々しさにも圧倒されました。その美しさには暫し見惚れてしまったくらい。思わず息を呑んでしまいました。

 期待に十分に応える素晴らしい歴史展でありました。毎度のことながら,大英博物館展にはいつも驚かされます。人類の歴史がそこにあります。様々な批判があるのも承知の上で,それでも大英博物館があったからこそ守られる人類の宝があることもまた事実。歴史の徒を自称するものとしては,やはり大英博物館を心行くまで堪能したいものであります。いつかは,絶対にいつかは,訪れたいという想いを新たにさせる歴史展でありました。
posted by 森山樹 at 08:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史展感想